エーリッヒ・ツァンの音楽ってどんな話?-クトゥルフ神話を要約その3

2021年7月30日

クトゥルフ神話と言えばラヴクラフトですが、クトゥルフ神話TRPGはやっていても、ラヴクラフト作品を読んでない人って結構いるのではないでしょうか。

恥ずかしながら、僕もそうでした。と言うわけでラヴクラフト作品を読んでいるのですが、中々に難しい!

しかし、読んでみると面白かったりします。なので、今回は、クトゥルフ神話系の作品を読んでみた感想などを書きます。『読んだけど、もう一度雰囲気を思い出したい人』とか、『ラヴクラフトのなんとなくの雰囲気』を知りたい人は、SANチェックしながら見て頂けると嬉しいです。

最初に、ネタバレにならないように、『オススメ具合』を書き、その後に物語の概要をザックリと書きますので、ネタバレ嫌な人は『オススメ具合』を読んだら、ブラウザバックしてくださいね(読んだ媒体や訳などの違いで、多少、物語や登場人物の名前が違っている場合もありますがご容赦ください)

ラヴクラフトについてはこちら→ラヴクラフトってだれ?

そんなわけで今回紹介するのは『エーリッヒ・ツァンの音楽』です。

【オススメ具合】

本編、約14ページ。めちゃくちゃオススメです。ページ数が短いってのもあるのですが、非常に世界観が好き。

「いくら地図を探しても、自分が昔住んでいた町がなかった」というミステリーな出だしから、ヴィオル弾きのエーリッヒ・ツァンという男との出会いと謎。そして、幻想と怪奇が入り混じる世界観はとても好きです(弦楽器の怖い曲などを流しながら読むとなお面白い)

一番の良いところは、クトゥルフっぽくないところです。後からクトゥルフ神話の作品として取り込まれた物語なので、よくある『邪神と歴史を追っていく』とか、物語中で唐突に『シュブニグラスがー、ニャルラトテップがー』なんて言われることもなく、この話は、一つの奇妙な物語として読むことができるのが好きです。

僕自身、今のところ、ラヴクラフト作品の中で一番好きだったりします。

この作品はラヴクラフト全集2に載っていますので、興味のある方は是非読んでくださいね。
映像化もされているようですが、劇中に出てくるヴィオルがバイオリンに変わっている作品が多いです。

【1、2、3、4、で説明するエーリッヒ・ツァンの音楽】

では、ここからはネタバレページになるので、見たくない人はブラウザバッグをお願いします。
また劇中に出てくるヴィオルですが、ヴィオル(ヴィオラ・ダ・ガンバ)自体を入手するのが難しかったので、形状が似ているコントラバスのミニチュアで代用しておりますのでご了承くださいませ。

 

【1:存在しない街】

地図を何枚拡げても、僕が昔住んでいた、『オーゼイユ街』という街の名前は見つからなかった。

僕はあの街を知りすぎるほど知っている。しかし、不思議なことに、あの街の行き方はおろか、方角さえも思い出せなかった。

おかしな話だ。貧乏な大学生活をおくり、エーリーッヒ・ツァンに出会った街なのに……。

 

【2:ヴィオル弾きの老人】

大学生だった頃の僕は、古風な街並みが残るオーゼイユ街の、今にも倒れそうな古家に下宿していた。この古家は、街から一番高い建物で、僕はそこの5階に住んでいた。

下宿してすぐ、毎晩、僕の上の階の屋根裏部屋から、奇妙な音楽が流れてきた。管理人に聞くと、ヴィオル弾きのエーリッヒ・ツァンという老人が住んでいて、彼は障害により発話することができないのと、とても気難しい老人らしい。

毎晩、上の階から聞こえてくるエーリッヒ・ツァンの奏でる奇妙な音楽を聞き、虜になった僕は、彼に話しかけてみることにした。

ある日、エーリッヒ・ツァンに「一度、あなたの部屋で、演奏を聞いてみたい」と言った時、彼は驚き、不機嫌な顔になったが、部屋に案内してくれた。

屋根裏の質素な部屋に入り、彼は美しいヴィオルの曲を弾いてくれた。だが、僕が毎晩聞いている、あの奇妙な音楽は弾いてはくれなかったので、僕は「あの曲を弾いてはくれないか?」と、その曲を口笛で再現しながら、気難しい老人に聞いた。

その瞬間、彼は僕の口を手で塞げ、怒りと恐怖の入り混じった顔になりながら、窓から誰かが侵入してくるのを恐れているかのような動きをした。

僕はそれを見て、困惑はしたが、それとは別に街の風景を見てみたいと思い、窓の方に近寄ると、僕に掴みかかり、ドアの方に追い出そうとしたので、僕も流石に怒った。

エーリッヒ・ツァンは僕の怒りに対して、筆談で謝ってきた『孤独な老人で、神経衰弱で悩んでいる。これからも時々遊びに来てほしい。しかし、あの不吉なメロディを弾くことはできない』と。

僕はこの老人が哀れに思い、部屋を後にしたが、あの奇妙なメロディと、一屋根裏部屋の窓から、美しい街を見下ろしてみたいという欲望は消えなかった。

 

【3:窓から聞こえる曲】

ある日、一番上の屋根裏部屋から声にならない断末魔のようなものが聞こえた。僕は急いでエーリッヒ・ツァンのいる部屋のドアをノックした。ドアが開くと、エーリッヒ・ツァンが恐怖の表情から、安堵した顔になり、僕を部屋に案内してくれた。彼はメモを書き『今、恐ろしい体験をしたから、全てを書き終わるまで待っていてくれないか?』と僕に筆談で伝え、僕は待つことにした。

待っている間、紙に出来事を書きなぐっている彼は、急に手を止め、怯えた視線を窓に向けた。僕を窓から音楽が聞こえてくるのがわかったが、それは不気味な曲ではなく、美しい曲だった。

その瞬間、エーリッヒ・ツァンはえんぴつを落とし、ヴィオルを勢いよく弾いた。窓から流れてくる音楽に打ち勝つように。すると、鋭く、悪魔のような音色が窓の外の西の空から響き、風が強くなり、窓が割れ、凍りつくような風が吹き込み、エーリッヒ・ツァンが記録していた紙が舞い、窓に向かって飛びたった。

僕は急いでそれを追いかけたが、紙は窓の外に消えていった。だが、何故か僕はこんな異常な状況であるのにもかかわらず、窓の外の景色を見てみたくなった。前から気になっていたことだ。町一番の高いところから美しいこの景色を一望できる唯一の窓。しかし、窓から見えてきたものは別世界だった。

窓の外の景色は、見慣れた街々はなく、灯りすらない。真っ暗な空間が無限に拡がっているだけだった。この屋根裏部屋はなにものかの闇に呑まれようとしているのだ。

僕はこの不気味な音楽だけが鳴り響く真っ暗な空間で、悲鳴を上げながら、エーリッヒ・ツァンの元まで戻り、彼を正気に戻すために「一生に逃げよう!」と叫びながら伝えた。しかし、彼は何も答えず、狂ったようなヴィオルの音だけが響いている。

僕は彼の身体に掴み、一生に逃げ出そうとしたが、その瞬間ゾッとした。彼に触れた時、その身体は氷のように冷えきっていて、吐く息もなかった。ヴィオルの音だけが狂ったように曲を奏でている。

 

【4:存在していた街】

僕は必死になって部屋から出て、無我夢中でこの街から逃げ出した。しばらくすると賑やかな往来に出て、風はなく、月は出ていて、街にも明かりがあった。街の景色が変わっても、さっきまでの体験は本当に忘れられない出来事だった。

その後、細かくオーゼイユ街を探してみたが、見当たらなかった。しかし、あの怖ろしい出来事を体験した僕は、この街が見つからないことやエーリッヒ・ツァンの書いた紙が窓に吸い込まれてしまったことを残念だとは思わない。

エーリッヒ・ツァンの音楽……終

 

僕:※特に名前はない。
この物語の主人公。

エーリッヒ・ツァン:エーリッヒ・ツァン
この物語のキーになる存在。

※この記事で物語をまとめる時は、覚えやすいように、あまり名前を出さないようにしているのですが、この物語は『エーリッヒ・ツァン』という名前はキーなので、名前のまま登場させました。

【感想】

改めて、物語を読み直してみたのですが、他のラヴクラフト作品より読みやすい! そして、活字の魅力がふんだんに詰め込まれています。最後のエーリッヒ・ツァンと謎の怪物の弾奏の描写などは本当に美しいなって思います。

因みにこの謎の怪物なのですが、トルネンブラという名前でクトゥルフ神話の世界に神話生物としてデビューしています。

こんな感じで、ラヴクラフト初心者の僕が、ラヴクラフト関係の話を簡単にまとめていますので、良ければ見てくださいね!

次回→ダゴンってどんな話?-クトゥルフ神話を要約その4

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